
どんなスプレー案件も出荷前にどこかで問題が出ます。大切なのは、その問題がサンプル段階で見つかるか、コンテナの中で見つかるかです。日用品メーカー向けに進めた500mlトリガースプレーの案件を、修正が必要だった点も含めて週単位で公開します。
ご相談の内容と、それで決まったこと
キッチン用シトラス系洗剤を扱うブランドから、EU小売向け500mlトリガースプレーの依頼がありました。容器は再生材30%、ラベルは両面貼りです。この一文で技術的な方向のほとんどが決まりました。
この時点で発注はまだありません。この内容だけで見積りが可能で、見積書に下記の日程を書面で添えました。
| ご要望 | 決まったこと |
|---|---|
| シトラス系溶剤の処方 | HDPE容器と溶剤対応ガスケット。PETは対象外 |
| 500mlの店頭規格 | 既存500ml金型を使用し、金型費なし |
| EU向け、再生材30% | PCR対応HDPEグレードとラベルのリサイクル性確認 |
| 両面ラベル | 肩が完全な円形でない、平らなラベル面のある容器 |
| 初回出荷まで10週間 | 2週目サンプル、3週目印刷承認、7週目量産 |
0〜1週目:見積りの前に確認した五つのこと
スプレーパッケージは中身で決まります。だから最初のやり取りは価格ではなく技術です。
この五つが容器素材、ガスケット材質、スプレーヤー機種を決めます。ここを飛ばすと、8週目に間違ったパッケージを前に立ち止まることになります。
- pHはいくつか、塩素・酸・溶剤は入るか
- 粘度は水のように低いか、ジェル状か
- 充填は常温・温間・熱間のどれで、ヘッドスペースはどれだけか
- 表示する保存期間と保管温度は
- 販売国はどこで、子供向け安全や表示規制の確認が要るか
1〜2週目:パッケージ構成の確定
提案した組み合わせと理由です。
ブランドの希望でまずPETを試しました。透明で見栄えが良いためです。しかし溶剤と接触して2週間で口部に応力割れが出ました。この試験があったから、後の工程で問題にならずに済みました。
| 構成 | 選定 | 理由 |
|---|---|---|
| 容器 | 500ml HDPE、28/410口部 | 耐溶剤性、既存金型、平らなラベル面 |
| スプレーヤー | PPボディ、バイトンガスケット、1回1.2ml | 溶剤対応シール、洗剤に合う噴霧量 |
| ディップチューブ | 底面から3mm余裕で裁断 | 傾けても空気を吸わない |
| オーバーキャップ | 全面・不透明 | 輸送中の保護、店頭でスプレーヤーを隠す |
| 印刷 | 肩に2色印刷+ラベル | ブランド色は容器、法定表示はラベル |
2〜3週目:サンプルで見つかった三つ
最初のサンプルは問題を見つけるためのものです。三つ出ました。
三つとも200本のサンプルで見つかりました。2万本の量産後に見つからなかった理由がここにあります。
| 問題 | 影響 | 対策 |
|---|---|---|
| 1回の吐出量が0.9ml | 洗剤には少なく、二度押しになる | 噴霧角の広い1.2mlスプレーヤーに変更 |
| ディップチューブが底面に到達 | 15度傾けると空気を吸う | 3mm余裕で裁断し、三つの角度で再試験 |
| 肩の曲面でラベルが浮く | 48時間で端がめくれる | 平らなラベル面を指定、曲面用の高粘着を使用 |
4〜5週目:印刷、色、そして重要な承認
ブランドは容器色にパントーン基準、ラベルにマットを希望しました。画面ではなく実際の樹脂で色チップを作って承認いただきました。PCR比率でマスターバッチの発色が変わるためです。
- 色基準は画面ではなく実物チップで承認
- 印刷範囲とラベル罫線を確認
- 法定表示とリサイクルマークを販売国基準で確認
- ロット許容差を記録し、再注文時の比較に使用
6〜7週目:量産と検査項目
承認サンプルを基準に量産を開始しました。この案件の検査計画です。
検査記録はロット番号とともに保管します。特定コンテナについての質問にも、容器・スプレーヤー・樹脂ロットまで追跡できます。
| 検査 | 範囲 | 検出する内容 |
|---|---|---|
| 外観検査 | 全数 | 傷、色差、ラベル位置 |
| 吐出量 | 1時間ごとに抜取 | スプレーヤー摩耗、ノズルロット違い |
| 漏れ・密封 | 組立品全数 | 口部接合部のガスケット当たり |
| 落下試験 | パレットごとに抜取 | 肩と底面の割れ |
| カートン落下 | 出荷ごとに抜取 | 輸送中の保護性能 |
8〜9週目:梱包と積載
完成品は48個入りカートン、パレット当たり40カートン、スプレーヤーは立てたままオーバーキャップを装着して梱包しました。積載はカートン高さからパレットパターンを組み、コンテナ内寸を埋めました。輸送コストの差は金型ではなく、この段階で決まることが多いのです。
- カートン:48個、両面段ボール、層間に仕切り
- パレット:40カートン、ストレッチフィルムと隅金具
- 積載:コンテナ内寸に合わせたパレットパターン
- 書類:パッキングリスト、検査成績書、EU向け材料申告
この案件がうまく進んだ理由
特別な方法ではありません。決める順序を守っただけです。
- 容器より先にスプレーヤーを決め、口部とディップチューブを一度で合わせた
- 0週目に処方情報を受け取ったため、溶剤の問題をサンプルで発見できた
- すぐ量産せず、200本のサンプル段階を挟んだ
- 色は実際の樹脂で作ったチップで承認した
- 10週間の計画に2週間の余裕を置き、そのうち1週間を実際に使った
よくいただく質問
新しい容器形状が必要だった場合は?
1週目に金型製作が始まり、3〜6週間かかります。新形状の現実的な日程は初回出荷まで14〜16週間で、10週間は難しいです。
溶剤系洗剤に再生HDPEは使えますか
多くの場合可能ですが、再生比率で物性と色が変わります。そのグレードを処方と一緒に試験してから確定し、EU表示のために再生比率を書類で残します。
金型代を負担した場合、金型は誰のものですか
お客様のものです。金型は一度だけ請求し、お客様の参照番号を刻印して保管します。他のお客様の注文には使用しません。
承認後に処方が変わったらどうなりますか
適合性試験をやり直し、必要なら再サンプルします。後からの変更は、不良コンテナ1本分よりはるかに安く済みます。